ストレスなどによる男性の性腺機能低下症がLOH症候群

性ホルモンが少ない事が原因で起こる疾患の総称を性腺機能低下症(Hypogonadism)と呼びますが、これは男性の場合も、女性の場合も起こります。ここでは男性の場合(Male Hypogonadism)のみを考えてみましょう。上のYoutubeのビデオも男性ホルモンの低い分泌量(Low Testosterone)に伴う性腺機能低下症についての講演ですので、本来ならば、Male Hypogonadismというタイトルにすべきですが、先にTestosteroneという単語が出てきたために、Maleという言葉を冗長な物として削除したのでしょう。ちなみに素晴らしく(英語ですが)解りやすい講演内容でした。

 

この男性の性腺機能低下障害ですが、先天的な物、小児期・思春期(特に第二次性徴の始めの頃)に起こるもの(たとえば、おたふく風邪など)と、成人として体が成熟しきった後、男性としての機能も出来上がった後に、ストレスを中心とした心因的要因や環境・生活習慣の劇的な変化などにより起こる事があり、これを加齢性性腺機能低下症候群と呼び、ヨーロッパや日本ではLate-onset Hypogonadism(日本では略してLOH症候群)と呼んでいます。ここも本来ならば Male、男性、といった単語を先に持ってくるべきですが、長くて難しい単語が並んでいるので、省略したのでしょう。

 

また、後天性のうち、体が成熟し男性機能が完全に備わった後で男性ホルモン分泌が低下する例として、LOH症候群の他、物理的要因・外傷などによるもの(例えば精巣など男性器・臓器のダメージ)がありますが、これらも専門病院での検査で区別できます。ここでは、心因的・環境変化によって男性ホルモン値が急低下する事によって起こるLOH症候群と、先天的に男性ホルモン値の低い性腺機能低下症を比べてみましょう。

 

先天的に男性ホルモン値が低いのであれば、治療法も違ってきますが、小児期・思春期に発症した性腺機能低下症なのか、成人期に入って発症したLOH症候群なのか、確実にわかるのは専門病院での血液検査です。男性ホルモンを出すように精巣や副腎などに命令するのは脳ですが、脳からの命令信号(黄体形成ホルモンなどのホルモン)は分泌されているのに、男性ホルモン値が低い場合は精巣に障害があり(胎児のときや、成人期を迎える前に精巣などの男性機能が十分発達しなかったか、あるいは発達後に外傷などのダメージを受けたか)、逆に、外見は細かい部分まで立派に成熟した男性なのに、脳からの命令信号(ホルモン)が出ていない場合は、精巣ではなく、信号を出す脳に問題があります。脳が信号を出さないのは、大抵の場合、ストレスによるものです。

 

専門病院の問診でも、LOH症候群を発症した時期は大体わかりますが(例えば、自分の人生はピークを過ぎてしまった、自分の人生は終わった、と一時的ではなく、ずっと考えるようになり始めた時で、ホルモン検査を省いた定期健康診断や人間ドックのデータなどからも大体解ります。赤血球値、インシュリン値、血糖値、視力、肥満度、悪玉コレステロール値などと相関があります)。これらの問診表はネット上でも公式の物が手に入りますので、病院へ行くのをためらっている人は、まず問診表を使って自己チェックをしてみて、気になる結果が出たら、迷わず専門病院での検査を受けて下さい。

 

ホルモン力が人生を変える (小学館101新書 23)
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小学館

 

さて、この先天性の性腺機能低下症ですが、上の堀江先生の御本の中でも、

 

「男性ホルモンを胎児の時に脳が十分浴びて居れば、薬指がながくなる。人差し指よりも薬指の方が長い人ほど、差が大きいほど、生まれつき男性ホルモンが高く優勢で、逆に薬指が人差し指よりも短い人ほど、生まれつき男性ホルモンが低く、女性ホルモンが多い。」

 

と書かれています。これは男性にも女性にも当てはまるそうで、草食系の男子ほど薬指が短く、肉食系女子の方が薬指が長いそうです。実際私の周りの女友達にも薬指が人差し指よりも長い人が何人かいますし、性格的にもどちらかというと男勝りで行動力があり、物事をはっきりと(悪く言うとズケズケと)話されます。

 

さらに、最近になって、「右手の人差し指と薬指の長さの差」に特化すると、胎児(3か月目くらい)に脳が浴びた男性ホルモンのシャワーを反映し、生まれつき男性ホルモンが優勢であったか、女性ホルモンが優勢であるかの違いが分かる、という論文が発表されたそうで、私は以下のターザン誌のホルモン特集号を読んでこの事を知りました。

 

Tarzan (ターザン) 2012年 8/9号 [雑誌]
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マガジンハウス

 

下のビデオのお兄さんのように、自分や他人の目の前で指の長さを比べるよりも、コピー機の上に右手を置いてコピーしたものを見ると良いそうです。指や爪を見る時って、指が弓のように反るので、人差し指が長く、薬指が短くみえて(逆転して)しまいますからね。

 

 

ただし、この指鑑定による男性・女性ホルモンバランスのチェック、アメリカで議論を呼んでいます。男性ホルモンが高い人ほど運動能力に優れ、リーダーシップを発揮し、リスクを厭わない(出来る証券マン、株トレーダーに多い)と言われていますし、そのような統計結果も論文などからも発表されていますが、これが差別に繋がるというのです。

 

例えばスポーツ選手としての資質について、奨学金や入学試験の先行で、10代の若者が指の長さを図られて、それで将来性まで見られてしまったら、どうなるでしょう?ホルモンと指の長さの相関はあるにせよ、他の先天的・環境的要因もあるわけで、血液検査や尿検査をしないときちんと解らないのです(解ったとしても、そのデータを使うかはスポーツ選手のドーピング検査など、特殊な場合に限って行うべきです)。

 

 

また、企業などでの採用面接に関しての使用も論議を呼んでいます。証券マンに向きか不向きかだけでなく、その人の性格・気質までもホルモンで判定されてしまうわけです(上のビデオは、National Geographicが作った番組で、こういった男性ホルモン・テストステロンの問題を浮き彫りにしています)。

 

例えば、男性ホルモン(テストステロン)が高いと仕事が出来るだけでなく、自分に都合が良い事ばかり(良いほうに)記憶したり、都合の悪い事は忘れたり、攻撃的であったり、(リーダーシップが取れない状況に置かれると)協調性がなく、セクハラ・いじめなどのトラブルメーカーになりやすいそうで、家庭においても家庭内暴力と、社会においては犯罪と結びつける専門家も居ます(詳しくは以下の本をご覧ください)。

 

テストステロン―愛と暴力のホルモン
ジェイムズ・M. ダブス,メアリー・G. ダブス
青土社

 

欧米(特に英語圏)では小学校からのいじめの問題から家庭内暴力、セクハラ、犯罪まで、男性ホルモンの事を考慮します。一方で、アメリカの場合は特に、男性ホルモンを鬱の治療などに使い、成果を上げています。これに対し、日本では性ホルモンに対して文化的なタブーがまだまだ根強く、性的なイメージで捉えられている場合が大半だと思います。男性更年期障害やLOH症候群も、同じような理由から差別や偏見を受けている、と私自身強く感じています。知識が広がっていないから、先入観が強いのでしょうね。検査を受ける前は私も先入観を持っていて、検査でLOH症候群(重症)を解ってからは、結果を知った方から強い差別を感じる事も未だによくあります。

 

上記の文献・ビデオ以外の参考文献・サイト

 

(指を使った見分け方意外に、先天性と加齢性の違いを身体的発達の点から記した日本語のサイト)

 

男性と女性の性腺機能低下症について簡単にうまくまとめてあるサイトはこちら。

http://health.goo.ne.jp/medical/search/10L50400.html

 

ちょっと長いですが、男性性腺機能低下症については、以下のサイトの方が詳しいです。

 

http://merckmanual.jp/mmpej/sec17/ch227/ch227b.html

 

先天性の物や思春期に十分な発達が得られない事が原因の場合については、以下のサイトに解りやすく載っています。

 

http://tanaka-growth-clinic.com/shishunki/shishunki_3.htm

 

(同内容の英語のサイト)

 

簡潔明瞭で、短文のほか箇条書きが多いため、以下のサイトは英語ですが割と簡単に読めますし、CNNのデータベースでも唯一ここのリンクが貼ってあります。

 

http://www.mayoclinic.com/health/male-hypogonadism/DS00300

 

以下の英語版のWikipediaでは、指ではなく、ホルモン量(黄体ホルモンなど)の比を図ることにより、先天性か加齢性(後天性か)を見分ける、と明記しています。

 

http://en.wikipedia.org/wiki/Hypogonadism

 

以下のサイトだと少し長文気味(英語圏では普通の長さ)ですが、図が入っているので解りやすいです。

 

http://www.clevelandclinicmeded.com/medicalpubs/diseasemanagement/endocrinology/male-hypogonadism/

 

欧州連合(EU)の発行したガイドライン(英語版)もあります。大きい活字で短く読みやすいです。

 

http://www.uroweb.org/gls/pockets/english/15_Male_Hypogonadism.pdf

 

欧州泌尿器学会(European Association of Urlogists)が発行した診断ガイドもあります。図解入りですが、長文です。ただし、日本泌尿器学会の発行した加齢性男性性腺機能低下症候群(LOH症候群) の 診断基準ガイドと内容も長さもほぼ同じですし、このヨーロッパの診断ガイドに(私の知る中では)初めてLate-onset (加齢性、LOH の LO に相当)という単語が登場します。日本で診断基準を作る際に参考とされたのは、アメリカ(Andropause, Male Menopauseなどの曖昧な定義)ではなく、ヨーロッパの欧州泌尿器学会であった事が読み取れます。

 

http://www.uroweb.org/gls/pdf/16_Male_Hypogonadism_LR%20II.pdf

 

全米の大学・研究機関の中でアメリカ政府(NSF)から研究資金を一番多くもらっている事で有名な John Hopkin's 大学(医学部中心の有名校)ですが、ここのサイトは箇条書きで上手くまとめてあります。

 

http://www.hopkinsguides.com/hopkins/ub/view/Johns_Hopkins_Diabetes_Guide/547088/all/Male_Hypogonadism

 

2012年12月18日に掲載