男性更年期より怖いLOH症候群

 

 長年世間では男性更年期障害と呼ばれ、広く曖昧に定義されていた男性ホルモン低下の疾患・症状ですが、2007年に日本泌尿器科学会・日本Men's Health医学会の「LOH症候群診療ガイドライン」検討委員会が新しく狭い定義で

 

男性加齢性性腺機能低下症候群(Late-onset hypogonadism: LOH症候群)

 

という疾患を定義しました。単なる「年のせい」によるホルモン低下や外傷・その他の疾病が原因ではなく、ストレスなど、心因的な理由で男性ホルモンの量が(年相応の量に比べ、低い値に)下がってしまい、日常生活・社会生活に支障をきたすというものです。このLOH症候群の定義とその経緯については、以下のサイトに先述の検討委員会の文書が載っています(最初の2~3ページを読んでください)。

 

http://www.urol.or.jp/iryo/guideline/pdf/gl_LOH.pdf

 

 さて、この加齢性・・・という長い疾患名ですが、年相応の性ホルモン量がない、というのは男性でも女性でも起こります。また、男性だけを考えても、先天的に(生まれつき)ホルモンが少ない場合、小児時期~思春期(特に第二次成長期)に十分な性ホルモンが分泌されなかった、という場合があり、上記の加齢性(Late-onset)というのは、成人になってから、特に40代と50代を中心とした中高年の間で、ストレスなどの理由で男性ホルモンの量が(年齢とともに予測される緩やかな減少ではなく)急な早い割合で数年のうちに(あるいはもっと短期間で)かなり減少してしまう場合を指します。したがって、上記の「加齢性・・・」という言葉は、LOHの日本語訳として正しくはないと私は考えています。加齢に伴う緩やかな減少ではなく、急降下で男性ホルモンが短期間に激減するのですから。そこでこの誤解を避けるために、LOH症候群という言葉の方が多く用いられているのでは?と思います。NHKの番組「ためしてガッテン」などでもLOH症候群という言葉を使っていますので、まずはこの用語の意味をはっきりと理解し、民放テレビや雑誌が未だに使っている男性更年期障害という広義の用語との区別をしっかり出来るようになる事だと思います。

 

 私も親しい友人や腹を割れる少ない同僚に自分が深刻なLOH症候群である(しかも重症である)というのを伝えるのにかなり苦労しました。私の頭がLOHのために年々急速にボケてきた、コミュニケーションが取りにくくなった、というのもあります。男性更年期とつたえると、相手はおぼつかなく

 

「ああ、テレビでやってるあの病気ね。」

 

と、最初は理解してくれるかと思うのですが、女性の更年期に似た弱い(一時的な)症状と勘違いする方が圧倒的に多く、私の友人の中には今でも

 

「更年期なんて病気じゃない。あなたがそう思っているだけだよ。」

 

とか、

 

「医者の言う事なんか信用するな。彼らは何でも病気にしたがる。」

 

という人も(年配の人ほど)多いです。指圧など、民間療法の先生も西洋医学は大嫌いなのか、大抵こう言います。私の通っている有名な大学病院(メンズヘルス外来;いわゆる男性更年期外来)は研究・治療実績もしっかりしていますし、漢方療法なども取り入れ、一般人用の本も出され、治療にあたる先生方もテレビや雑誌によく登場し、メンズヘルス外来のウェブサイトもしっかりしているので、同じく学者として「懐疑心」を持ち合わせた私でも(論文をチェックしたり、あれこれ調べましたが)今お世話になっているこの大学病院・メンズヘルス外来を信用しています。

 

 私の場合、ここでホルモン充填療法による治療を始めてもう5か月が経とうとしていますが、まだ快方には向かっていません。検査結果(血中の男性ホルモン値)は下がるばかりです。もう治らないのでは、と落ち込むことも多いです。しかし、完治するのに半年から2年位、平均1年はかかるらしいので、まだ諦めたくはありません。信じる者は救われる、といいますが、今はただ、この大学病院の先生方を信じています。

 

 さて、LOH症候群と男性更年期障害の違いを友人や家族、会社などにどう説明するかですが、当事者の頭が鈍ってきている、というのは典型的な症状ですからね。私も大分苦労しました。ただ、このサイトを一か月前に立ち上げ、文書にして相手に伝えようとしたら、それまでバラバラだったおぼつかないアイデアがある程度まとまってきました。LOH/男性更年期にかんする情報の受け身だったのが、情報を発信する側になる事で、アイデアをまとめたり、文責も気にして、あれこれ他の資料や論文などと信憑性や真偽をクロス・チェックするからだと思います。

 

 というわけで、LOH症候群とは?男性更年期障害とは?それらの違いは?について、自分で書き出して、まとめてみると良いと思います。アイデアを文章にしてまとめるというのは、脳をかなり使います。脳を使うと(精巣に比べると少量ですが)男性ホルモンが脳内で生産される事が最近になって解っています。

 

2012年12月17日に掲載

追記(2014年8月25日):筋肉トレーニングをすると、筋肉内で直接男性ホルモンが生産されます。

筋トレをすると、男性ホルモンの一種であるDHT(ジヒドロテストステロン)が筋肉内で生産される事が解ってきました。クレアチンなどのサプリを摂って筋トレすると、DHTの生産が上がるため、アメリカでは男性更年期・LOH症候群の重症患者に、クレアチンを飲みながら筋トレを続けるように勧める医師もいます。その事例のYoutubeはこのサイトでも紹介しましたが、そのメカニズム(筋肉内でのDHTの形成)について、数か月前ですが、ターザン誌に記事が載っており、私も夕方に筋トレをするとその直後数時間~翌朝は調子が良いので、なるほど、と合点しました。DHTはテストステロンよりもかなり強力なので、微量の分泌とはいえ、効果があるそうで、私の医師も、1~2か月前から「テストステロン剤を(朝に)塗ってから、早いうちに筋トレをすると効果がありますよ。」と運動療法を勧めてくれています。詳しくは別の記事で紹介します。